
見知らぬ男性の災難 〈電車の中、小声で英語音読する女性〉
先日のこと。電車に乗る。普段と同様、金曜夕方の込み具合。
大声で話す人はいない。若者四拍子のイヤホーンの音楽の漏れもない。
あたしはいつものように電車に揺られながら薄手の本を読んでいた。
ところが、安堵したのも束の間。
英語を小声でもぞもぞ話すおばちゃんがわたしの隣りにたっている。
彼女は英語のお勉強とあって堂々たるもの。
おばちゃんの本の開き癖は大胆で、左手で本を背固め。200度近い開き具合は見事。
ご自分では小声で音読されているので問題があるとは思っておられないようす。
むしろ、語学勉強とあって、誇らし気にさえ感じる。
日本語でもない独特のリズムは気にかかって仕方がない。
この違和感はわたしだけではないらしい。
まわりの突き刺すような目。異様な空気の流れ。
電車内の雰囲気はすこぶる良くない。
彼女の前に座る男性は分厚い本を読んでおられる手を止め、おばちゃんの方をにらんでおられた。
満員電車内での初級英語音読は誠よろしくない。
英語本には開高健。
いつも写真ではおおらかな開高の顔が、恨めしそうにこちらを眺めている。
事実は小説よりも奇なり。これぞ、オーパ!だ。(爆)
わたしは小声の英語から距離をおき、再び本に目を落とす。
だが、真正面に座られている男性は気の毒だった。
頭上に放たれる声から逃れる事も出来ず、膝元に置かれた活字の表面に男性の目は泳いでいた。
大阪にて